本能(instinct)は、一般に動物の種ごとに備わっている生得的な行動傾向をいう。本能は、生活体の生存と種の維持にとって必須な摂食、性、闘争、造巣、哺育、等の行動にみられる。ダーウィンの進化論以後、人間は知性動物は本能というデカルト的二元論は勢力を失い、人間にも本能を認めるようになったが、下等動物ほど本能にもとづく行動が多く、人間では少数のものに限られるとされている。W.ジェームズ、W.マクドゥガル、E.L.ソーンダイク、S.フロイトなどは本能について種々議論した。現代では本能を①行動理論の一環である一次的(基本的)動因
とほぼ同義にみなしたり、②比較行動学の角度から行動様式の面のみ取り扱ったりする。
出典元：心理学小辞典初版第16刷（有斐閣,1988）